先日、僕は角膜ジストロフィーという眼の手術を受けてきました。 僕の居住している北海道でこの病気の手術ができる場所は函館と旭川の二か所しかないらしく、僕は若干住所に近い後者を選択しました。
有名な眼の病気としてすぐに思い浮かぶのが白内障、緑内障。 ボクサーが選手生命を絶たれる原因と言われる網膜剝離。 糖尿病患者がよく「眼に来た。」というのは、網膜症のことを指します。
これらの眼病であればメジャーであり患者数も多いのでだいたいどこの眼科でも手術できるのですが、僕の病気は発症自体があまり多くないうえに特殊な装置が必要になるらしく、手術できる病院が限定されるわけです。
この病気は眼球の表面を粒状の白い膜が時間と共に覆い尽くしていくというもので、手術はこの膜をレーザーで焼いてきれいにするというものです。 この手術、術中は麻酔が効いていて痛みはないのですが、眼球を焼くという手術の性質上、麻酔が切れてから眼の表面の膜が再生されてくるまでの二日間程度(個人差はあると思います)、痛みと涙が止まりませんでした。
しかしその後、痛みと涙は落ち着き、おぼろげながらも周りを認識できる状況にまで回復したため、退院となりました。 完全回付までの入院をさせないのは致し方ないと思われます。 先ほども書きましたが、この病気を手術できる病院は限定されています。 いくら発生件数の少ない病気とは言っても、施設が限定されれば順番待ちが生じます。 現に僕も二カ月待ちでした。
そんな過酷なリスクを抱えた病気でありながらも、幸い経過観察だけなら一般の眼科でもできるらしく、執刀医にはそのように手配していただきました。 結局、僕の場合、手術自体に関しては入院期間六日間、費用約六万五千円(限度額適用認定証使用)というところでした。
さて、病気だけを治すだけならばここで話は終わりです。 しかし僕の場合、病気の治療は単に山を一つ越えただけで、むしろここからが本番なのでした。
そもそも僕がこの手術を受けるきっかけとなったのは、運転免許の更新のために地元の警察署に行ったことが始まりでした。 既定の視力に達していないことを担当者に告げられ、眼鏡を作ることを勧められたので、近場のメガネ屋へ行ったのですが、先に眼科での診察を言われたのです。
そこで眼科で診察を受けてみると、今回の病気が発見されて、大病院での治療が必要であると宣告されたわけです。 この病気は特に痛みなどの自覚症状があるわけでもなく、糖尿網膜症のように、放置しておくとやがて失明するといった性質のものでもありません。
しかし、眼球の表面を覆う薄いたんぱく質の膜が徐々に増えていき患者の視力を下げていくので、手術でそれを焼いて除去する以外に改善する方法が現時点ではありません。
僕もまだ40代であり、運転免許はまだまだ失いたくありません。 事実上、手術を受けないという選択肢はありません。 しかし、更新手続きで初めてこの病気に気付いたということと、手術の順番待ちという不幸の絶妙なブレンドが「免許の失効」という事態を引き起こしたのです。
これはまいった、と思い僕は手術後北海道公安委員会(正確には手稲免許更新センター)に行き、事情を説明しました。 担当者の回答は「更新期間を過ぎても半年間は更新できます。 ただ、更新しなかった理由が単に本人のミスか、やむを得ない事情かによって更新後の免許証の扱いが変わります。 本人のミスの場合はゴールド免許などの特典は剝奪されます。 海外出張、入院などの事情がある場合には、それらを証明する書類の添付が必要です。 ただし特典は継続されます。」とのことでした。
僕は次の免許がゴールド確定していますので(長い道のりだった!)、なんとしてもゲットすべく、担当医に完璧な診断書を書いてもらおうと窓口の担当者に診断書の記載条件を訊きまくりました。 担当者は僕の必死なオーラを感じ取ったのか、それとも僕みたいな人間が今までに何百人も来ていたからなのか(笑)、一枚の紙片を僕に渡し、「詳しくはこちらに書いてますからどうぞ。」と微笑み、次の人の対応に当たっていました。
最後に、この紙片の内容を一文字違わず掲載し、今月を締めくくろうと思います。 それでは。
□ 診断書
□ 傷病名、初診日、入→退院日、現状(完治→通院中等)の記載があるもの
□ 入院していない場合や退院後すぐに手続きができない理由があった場合
手続きが不可能だった期間・理由・病状などが明記されているもの
□ 視力に影響する傷病の場合
・初診時の視力(裸眼・矯正、左右それぞれ及び両眼)
・手術日
・視力の回復日
・回復時の視力(裸眼・矯正、左右それぞれ及び両眼)
が明記されているもの