ヒゲおやじ

ある男の後半生(こう反省)

趣味

芸術作品と商業主義

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世の中には様々な分野に「不朽の名作」なるものが存在しています。 不朽、というからには当然それらの作品群は世に放たれてからそれ相応の期間が経過しており、それでいて現在でも人々に愛されているわけですから、世に出て間もなく名前すら消えてしまうほとんどの生産物とは違い、なにかしら時代を超越した普遍的な要素を持っているといえます。

生き残るものと死に絶えるものの差、これを言葉で表現することは、ちょうど生まれながら目の不自由な人に「赤ってどんな色?」ということを説明することと同じくらい非常に難しいことなのですが、同じ作品に感動できる人同士では、一言も交わすことなくなぜこの作品が不滅なのかが分かるわけですね。

なので同じ趣味の人がたまたま出会ったりすると、時として異常な高揚感に包まれたりする。 しかし世の中はなかなか意地悪(笑)で、偶然趣味が合致してもその傾倒レベルまでもが一致しているということがめったにないのです。

片や作者の生年月日から趣味嗜好、各種のエピソードまで完全網羅するほどの超絶マニア。 一方で2、3の作品を触った程度の初心者ではせっかくの共通した趣味でも一方は委縮し、他方は退屈するでしょう。 またレベルが近くてもそこはやはり別人格同士の人間、作者の発するメッセージの受信の琴線が微妙に違ったりします。

僕は現在まで、残念ながらあまりこの種の出会いには恵まれていません。 ただそれだけにもし出会った時は大切にしたいものだとは常々心掛けています。

さて話は変わりますが、いわゆるヒット作というものが世に出されますと、当然ビジネス界が大きく動きます。 巨額のマネーが取引されるので当然なのですが、ビジネス界というものはこれらの生産物を「知的生産物」というより「金のなる木」とでも思っているのか、安易に「パート2」、「続~」なるものを要求しがちに見えます。

僕も大好きな映画「バックトゥザフューチャー」のように、最初から続編の構想が織り込み済みの物であれば問題はないのでしょうが、某週刊誌のように予想以上にヒットしたので急遽続編、というのでは作者のインスピレーションも乾いた雑巾を絞るような不十分なものになってしまうのではないのでしょうか。

確かに一作目が大ヒットすれば、その効果で次作はそのネームバリューだけで一定の売り上げは保証されるでしょう。 しかしその内容が乏しく、にもかかわらずシリーズを続けていけば早晩、その「金のなる木」は実を結ばなくなってしまいます。

中にはモーツァルトのように異常な創作力を発揮する芸術家もいますが(36歳で死んでいるが900以上の作品を残した。初めて作曲したのが5歳の時というから、ざっくりと3週に一作品仕上げるペース)、こういうのは例外で普通の才能は、ゆっくりと染み出て樽に貯蔵されていく良質の油のようなものではないかと思うのです。

僕の好きな黒澤明監督の作品にも一作品を除けば続編らしいものはありませんし、宮崎駿監督なども表現したいことはその作品ごとに表現し尽くしてしまうのか、安易な続編作品がありません。

では「網走番外地」や「男はつらいよ」、「釣りバカ日誌」などのいわゆるシリーズ物はどうなんだ? ということについてですが、これらはストーリーで何かを表現する、というよりも「主人公を魅せる」ということに最重点が置かれていて、観客は主人公のいつもの活躍を見て笑い、痺れ、共感するわけです。 そしてその中にたまたま出来の秀逸なものがあると「シリーズ中の人気の一本」という称号が与えられます。

商業主義に迎合するなら(あまり好きな言い方ではないですが)、こういうシリーズ物の方が適しているかもしれません。 あまりストーリーに凝らなくても、とりあえず主人公たちに活躍の場を与えておけば、一定の収益は見込めるからです。

ただやはり歴史的な作品というものは、あまり商業主義とは相容れないものかなと個人的には感じます。 監督やスタッフの湧きおこるような創作意欲がまずあり、配給会社の総予算も度外視するようなお金をかけ、ほとんど博打のような感覚で公開初日を迎える。(笑)

本当にオーソドックスなパターンですが、名作はこのように生まれてくれるのが僕的には好ましく思います。

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