久々に首相が変わりました。 安倍首相から菅首相へ、七年ぶりに日本のトップが入れ替わったわけですが、なにかアメリカの大統領選挙なんかとは土台が違い、会社内での社長の引退に伴い、専務が新社長に昇格したような印象を受けるのは、僕だけでしょうか?
もちろん国それぞれに国民性、風土、歴史といったものがありますから「何が正しい」と一概にいうことはできません。 何事を行うにも根回しや暗黙の了解というものを好む日本人には、アメリカ式選挙はあまりにも極端で乱暴なものに映るかもしれません。
とにかく新政権は始まったばかりですし、菅さんも基本的に前政権の方針を踏襲するという方針らしいですので、国の方向性が大きく変わることはないかな、という印象があります。
ただ何となく、僕はこの菅さんという人から「見た目は目立たないが、腹に一物持っている」という雰囲気を感じ取ってしまいます。 いい方向か悪い方向かは分からないが、いつかビッグサプライズを起こすしたたかさがあるような気がします。
僕は今、小渕恵三元首相のことを思い浮かべています。 彼も、と言ったら非常に失礼な書き方になってしまいますが、外見で他者を圧倒するような柄ではなかったものの、首相を辞める(=亡くなる)までに実は数々の功績を残していたりします。
小渕さんが首相の座に就いた当初、あまり期待値が大きくはなかった記憶が僕自身にかなり明瞭に残っています。 「カブ上がれー!」とか言って野菜のカブを両手で掲げてテレビに映っている小渕さんと周りで笑っている取り巻き達のシーンは脳裏に焼き付いていますが、もしかしたらあれも彼のしたたかな戦略の一つだったのかもしれません。
自身の有能さを前面に押し出し相手を説き伏せれば、お互いに角が立つ。 特に政治の世界では自分イズナンバーワンの集合体なのだから、そこで自身の腹案を実現に持っていくには自分をあえて低く見せ、相手を油断させる、または持ち上げる。
そうすれば相手も無用なプライドを振りかざすこともなくなり、ここに至って初めて「真摯に国民のことを考えた政治家の心」が誕生する瞬間に立ち会うことができる。 全部僕の勝手な想像ですけど(笑)。
だから僕は小渕さんは良き政治家であったと同時に、良き役者ではなかったかと勘繰るのです。 そしてそれに似たような香りを僕はなぜか今回の菅新総理にも感じてしまうのです。 もちろんこれは菅さんが辞めてからでないと評価はできませんが。
しかし日本の場合は、アメリカ選挙のように「能力のある俺様に任せろ!」方式ではプライドやメンツがぶつかりあってうまくいきません。 集団の中から自分が推挙されるまで辛抱強く待つ。 そして時が来たらば「僭越ながら・・・」と相手を立てる。 頂点に立っても舞台を降りるその日までは最高の役者でいなければならないのです。
第二次大戦時の「一億総火の玉」みたいに、日本人はやはり団結すると強い国民です。 今回の新総理には良い意味で国民全員をたぶらかすような素晴らしい役者になって頂きたいと願ってやみません。