ヒゲおやじ

ある男の後半生(こう反省)

レビュー

音楽作品に対する評価、あれやこれや

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音楽においてよくあることなのですが、第一印象が素晴らしくて気に入ってしまった曲が、聴き込んでいくうちに実は意外に内容が薄くて面白くなくすぐに飽きてしまった、なんてことが僕の場合珍しくありません。

逆に最初は気にも留めていなかった作品が聴き流しているうちに、そのいぶし銀の魅力を否応なく見せつけてくることがあり、そういう時には当初その曲の存在自体を知らずに作品を購入したという心理的反動もあってか、得も言われぬ「得した感」に包まれるということもしばしばです。

これは別に音楽に限った話ではなく、映画でも漫画でも似たような感覚を覚えることはありますが、音楽というジャンルでやはり最も顕著です。 なぜこういう現象が起こるのか?

一発目に底の浅い作品に惹かれてしまう原因として、派手でカッコいい印象的な導入部であったり、ソロの部分がやたらテクニカルで挑発的であったり、転調が非常に劇的で聴き手の心理的琴線に絶妙なタイミングで触れてくる、などといった特徴があります。

ただ得てしてこういう作品は伝えているメッセージが陳腐であったり、曲の進行自体がオーソドックスで目新しさがないために、聴き手が本能的に辟易してしまっていることが多いのではないかと推測します。 だから飽きるのだ、と。

一方、徐々に好感度を上げていく作品というのはあまり派手さがないイメージです。 ただ単調かつ地味であるがゆえに、聴き手は繰り返し聴いているうちにわずかな変化に気付き始めます。 あー、こことあそこは韻を踏んでいるのか、とか二周目のベースは半音違うぞ、みたいな感じにです。

このように目を引くようなド派手な演出がないからこそ、細部の作り込みに目が向き、わずかな変化にニヤリとする。

加えて聴き手の作品に対する知識、イメージが全くのゼロ、フラットからスタートするという意味では、最も作品の価値を判定するのには最適な立ち位置かもしれません。

つまりCM曲、あるいはドラマの主題曲といったある意味作品自体にイメージ的なバイアスがかかったものだと、往々にして作品自身が持つ価値から離れた評価が下されることがあるのではないか、と思うのです。

例えばあるドラマが素晴らしく完成度の高いものであったとする。 そして休日に何気なくふとそのドラマの主題曲を耳にしたりすると、ドラマの名シーンや名台詞がありありと脳裏によみがえってくる。 起こっている現象は「パブロフの犬」の原理と同じものなのですが、何かその主題曲も神がかったもののように思えてくる。

一方当初は気に留めなかったというのは、アルバムを購入するまで曲の存在自体を知らなかったということが多いのです。 したがってバイアスが全くかかっていない。 かかっているとしてもせいぜい「そのアーティストが好き」かどうかというバイアスくらいです。

なので最も冷静に公平に判定が下せる位置にいると言えるかもしれません。

最近、YouTubeで色々な映画音楽を視聴していて、音楽はやたら有名で単独で演奏される機会も多いのに肝心の映画の評価は今ひとつだったり、あるいはその逆もあったり、なかなか興味深いな、というのが本稿起稿のそもそもの動機でした。

それではまた。

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