僕はどちらかというとインドア派の人間でした。今でもそうですが。
ただそれでも子供の頃は虫取りであるとか、鬼ごっことか、花火とか、子供なら誰でも受ける洗礼は受けています。
僕が子供の頃はインターネットなんてなかったですし、辺鄙な田舎町ですから、遊びなんてそのくらいしかありません。
木の幹にへばりついているクワガタが自分の手に落ちるあの瞬間、かくれんぼで鬼が自分を見つける直前のあのハラハラ感、川の水で冷やしたジュースのおいしいこと。
あの感覚はまた生まれ変わらない限り、蘇らないでしょう。
音楽は相変わらず好きで良く聴いてはいたのですが、中学卒業までは普通の子供時代を過ごします。
たった一つだけ、BCLという趣味を除き。
BCLというのはBroadcasting Listeningの略。つまりラジオ放送を聞き、受信報告書というのを作成します。
それを受信した放送局に郵送し、放送局に「うん、この人は間違いなくうちの局の放送を受信している。」というのが認められれば、べリカードというのがもらえるんです。
このべリカードが各局が趣向を凝らしているために、BCLマニアの収集癖をくすぐるわけです。
僕がなぜこんな趣味にハマったのかはもう覚えていませんが、実はこれ、ものすごく奥が深いんです。
最初のうちは単純にべリカードの収集が目的でしたが、続けていくうちに他の目的にも目覚めていきます。
AMラジオを良くお聴きの方はご存知だと思いますが、夜になると電波が遠くまで届きます。そのため夕方を過ぎると、県外や海外の放送も受信し始めます。
なので、自分のラジオでいかに遠くの放送局を受信できるか、ということに挑戦し始めます。
それが受信困難な放送局であるほど、意欲は掻き立てられます。
例えば僕は北海道在住ですが、同じ周波数で放送している2つの放送局があったとします。
一方は出力100kwで東京にある放送局、もう一方は出力5kwで沖縄にあるとします。北海道に住んでいると、普段は東京の放送局しか聞けませんよね?
ところが、当時ラジオには週に一回点検のため、放送休止時間というのがありました。たいてい日曜深夜から月曜未明です。(今は分かりません。)
ところがこまかい放送休止時間は各局まちまちで・・・・、ということはつまり!!!
そうです!東京が先に休止時間に入れば、少しだけ沖縄が聞けるのです!
僕はこの手のスリルがたまらなく大好きでした。しかも受信報告書を書けば沖縄のべリカードがもらえる!
今、これを読んでおられる方にどれほどBCLファンがおられるかは分かりませんが、BCLにハマった方なら「わかる、わかるぞー」とという気持ちだと思います。
そして、全ての放送局が休止されると、ラジオからは怪しげなハングルが聞こえ始めます。
朝5時の放送再開まで、恐怖のコリアンタイムの始まりです。同時に僕の新たな旅路のスタートでもありました。(つづく)