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フレデリック・ショパンとの出会い

投稿日:2017年4月13日 更新日:

ショパンの音楽って、なぜこんなにも魅力的なのか。 多分数え切れないくらいの人たちがこの疑問にぶつかり、それぞれ自分なりの答えを出しているんだと思います。

僕もそうですが、ショパンの魅力を言葉で説明するのは非常に至難の業ですよね。 まさに神が発見したとしか思えないような和声に出会った時、僕の脳内は恍惚となります。

しかもその「神の声」は、ピアノという楽器でしか神にならないのが本当に不思議です。 ショパンの音楽は世界中で愛されていますが、ピアノ以外のアレンジはあまり耳にすることがありません。

「幻想即興曲」や「木枯らしのエチュード」は、ショパン好きの人ならご存知でしょうし、嫌いな人はいないでしょう。

これらの作品はピアノの「音色の魅力」を最大限に利用しているため、他の楽器のアレンジだと恐らく死んでしまいます。

特に「木枯らしのエチュード」は低音部の地響きのようなうねりと、高音域の大嵐を模したきらめきの交錯が奇跡のように融合した逸品で、ピアノ以外での表現は不可能だと思います。

ピアノはありふれた楽器です。 鍵盤をポーンと鳴らしても、単音では特に人を惹きつける魅力があるとは言えません。

しかしドビュッシーやジョージウィンストンみたいな才能ある人の手にかかると、そこから水や夜、静寂なんかを思わせる和音がこれでもかってくらいに出てくるんですね。

この種の才能はごく一部の人間にしかありません。 そしてショパンは間違いなくその一人であって、誰が言ったか「凌駕し難い一つの規範」であると思うんです。

僕がショパンに心服している理由はいくつかあります。

まずヒットメーカーであったこと。 たった一人の人間が数多くの名作を生みだした、ということです。

同じ音楽というジャンルだとスーザのマーチや、ルロイ・アンダーソンの作品群、ジョプリンのピアノラグなんかがヒットメーカーとしてすぐに連想されます。

とにかく彼らの作品はどこかで聴いたことがある曲ばかりです。 おそらく彼らは本能的に聴衆の「落としどころ」を理解していたに違いありません。

当然ショパンにしてもです。 「ノクターン2番」、「別れの曲」、「子犬のワルツ」、「英雄ポロネーズ」・・・。

これらの作品がみんなたった一人の筆から生まれたなんて、さんざんショパンを聴いてきた僕でさえ、たまに奇跡のように思えてくることがあります。

次に、弾きやすさ。 と言ってもショパン自身、卓越したピアニストであったため、当然彼の作品も演奏は容易ではありません。

とは言いつつも、彼の曲を演奏したことのある人なら実感で分かると思いますが、運指が極めてピアニスト・フレンドリーに作られているんです。

つまり和音を押さえる場合でも、小指なんかの比較的力の弱い指は、あまり重要でない音を押すように工夫されている。

もう発想が完全にピアニスト視点なんですね。 だからどんなに込み入った響きの部分であっても、たいていの場合、彼の運指は弾き手にとって「助かった。」と思えることが多いんですね。

ショパンと同時代に活躍したリストという作曲家、ピアニストがいます。 彼もまた歴史に名を残すほどの作品を作っています。

ピアニストとしての腕はショパンと同等以上と言われますから相当なものだと考えられますし、実際リストの楽譜を見てみると「これ、本当に2本の腕で演奏できるの?」と思わず聞きたくなるような作品があったりします。

しかし僕はここにこの2人の方向性の違いを感じます。 派手なオクターブの跳躍、過剰な装飾音・・・。 何かリストの作品からは「俺はこんなに難しいことをしているアピール」臭がプンプンとしてきます。

一方ショパンも技術的には大変高度なものを要求しますが、それは表現のための必要最低限なものであって、決して人にひけらかすものではなかったと思うのです。

ショパンは多分、リストのこういうところに批判的だったのではないでしょうか。

最後にあのショパン独特のピアニスティックな和声を彼は無尽蔵に生み出せたということ。 これが最も僕がショパンを崇拝する理由です。

ショパンは39歳という若さで世を去りましたが、あと10年長生きしていたら、と考えるのは絶対僕だけではないはずです。

「バラード4番」、「舟唄」、「幻想曲」・・・。 これらの作品には彼の奇跡のような和声が詰まっています。

もし彼が49歳まで生きていたら、どんな作品を残していたのでしょうか? でも逆にもし49歳まで生きたとしたら、後期の傑作群はやはり死の間際まで生まれなかったかも、とも思います。

ベートーヴェンやモーツァルトにも言えますが、死が近づいた頃の作品というのは、悟りきった透明感というか独白という香りがします。

まあでも僕としては単に作品数欲しさに長生きしてほしかったですね。(笑) あと100作品は欲しかった。

初めてショパンを聴いたのが17歳の時。 今47歳。 多分死ぬまで聴き続けるでしょう。 世界中のショパン好きの人、幸あれ!

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