渥美清さんが亡くなって21年経ちました。 しかし彼の代表作「男はつらいよ」シリーズは今でも度々放映され、不動の人気を保っています。
噂では昭和天皇はこのシリーズの全ビデオを集めておられたとか。 あと、男はつらいよファンクラブの会員番号一番は故小渕首相らしいですよ。
当時は主役の渥美清さんのモノマネも沢山いましたよね。 それだけ国民に愛された映画だったんですね。
ストーリーは水戸黄門なんかと同じで毎回同じです。主人公の寅さんが、旅先でマドンナに恋におちる。寅さんが実家に帰省し、マドンナと再会。
しかしマドンナには恋人や旦那がいて、結局寅さんは三枚目になってしまう。
観客は毎回そのパターンなので、ある意味安心して観れるわけです。 水戸黄門と全く同じ論理ですね。
でもその「毎回同じパターン」の中にも、演出の妙なのか俳優の存在感が原因なのかは分かりませんが、作品の明暗を分けるもの、が存在しています。
その証拠は、全48作品がすべて同じ評価を受けているわけではないという現実ですね。基本的な内容は一緒なのに。(笑)
僕はこのシリーズの大ファンですので、監督のドキュメンタリーなんかもだいたい見るんですが、この映画は最初から最後まで一部の隙もなく計算されて撮影される、というよりも撮影されながら臨機応変にストーリーが変わっていく、ということが多かったらしいですね。
悪く言えば、行き当たりばったりってことなんでしょうか。 いや僕はむしろ、主人公の渥美さんがアドリブで意外なセリフを口にする。 その結果、監督が新たなインスピレーションを得て、物語が更なる展開を得るのではないかとふんでいます。
この映画を注意深く観ていますと、時々前半と後半で話の重心点が変わっていたりしていることがありますが、これはそうした「ほころびの残滓」なのかもしれませんね。
これだけの国民的映画ですからね。 松竹映画からは次回作を急かされるでしょうし、練り込んでる時間があまり取れなかったのかもしれません。
やはり評価が高い傾向にあるのは、寅さんがマドンナの不幸な身の上を知り、その問題を解決するために自身を顧みずに彼女のために尽くす、という要素がふんだんに詰まった作品ですね。 やはり日本人はこういう人情にやられてしまいます。
あと、このシリーズは撮影時期が時期だけに「古き良き昭和」がフィルムのあちこちに満載です。
携帯電話で話す寅さんなんて、どこに魅力がありますか? 必死で赤電話に10円玉を入れながら間に合わずに電話が切れるから「寅さん」なんですよ。
Suicaを使う寅さんなんて寅さんじゃありません。改札をタダで通り、後ろの人に押し付けるのが本物の寅さんのはずです。
寅さん役の渥美清さんは変えの利かない、はまり役でした。 ルパン三世の声優で有名な山田康夫さんと双璧をなすと言えるでしょう。
すでにお二人とも亡くなってしまいましたが。 しかし人は亡くなっても、作品は今も生き続けています。
ちなみに僕の寅さんオススメ第一位は17作目、「寅次郎夕焼け小焼け」です。始めて見る人にはこれをオススメしています。