僕は恋愛に関しては淡白な方です。 なのでいい歳こいて恋愛経験は希薄でした。 今でも希薄です。 一生希薄かもしれません。
ですが幼稚園から大学まで男女共学でしたので、周りに必ず女の子はいました。
僕の住んでいる地域はド田舎ですので、さすがに女優のようなレベルの娘はいなかったですが、やはりそれなりの女の子はいます。
いやそうではなく、何でもない普通の娘がこちらの敷居が自動的に下がることによって、魅力的に見えているのでしょう。
僕の初恋は中学生の頃でした。 ただ中学生の頃は「好き」ではあっても胸を焦がすほどではなく、趣味に没頭したり友達と遊んだりするとすぐに忘れてしまうくらいのレベルでした。
高校生になるとさすが思春期、好きになった女の子のことが頭から離れなくなりました。 暑中見舞いや年賀状なんかも出しましたが、運悪くクラスメートが郵便配達のバイトをしていて、僕の意中の女の子がばれてしまったことがありました。
当時は冷やかされてとても恥ずかしい思いをしたものですが、今ではいい思い出になっています。
この女の子には高校卒業後、告白をしました。 生まれて初めての告白でした。 きっかけは些細なことでした。
友人たちと僕の部屋でだべっているときに、高校時代誰が好きだったかという話になり、皆それぞれ意中の人を披露しました。
ちょうどその時は酒が入っていたので、勢いで「じゃあみんな好きな人に告ろうぜ」っていう流れになりました。
僕の意中の人(以下、Mさんとします)は、おばさんの家に住んでいたので、まずそこから呼び出すことから始めます。
当時はまだケータイなんてありません。 電話の呼び出し音が鳴っている間、僕の心臓は飛び出そうです。
間もなく、おばさんらしき人が電話に出ます。 僕は良い印象を与えるように切り出しました。「もしもし。僕はMさんの高校時代の友人で〇〇と申します。 Mさんはいらっしゃいますか?」
心なしか笑っているような感じがしました。 もしかしたら察していたのかもしれません。「待ってね。」「はい。」 昔はこんなのが普通だったんですよね。
そしてしばらくしてMさんが出ました。 もう30年も前のことなので話した内容は覚えていません。 しかし近くの公園に呼び出したのは記憶に残っています。
しばらくブランコの場所でどうでもいい話をした後、Mさんが唐突に「で何?」って下を向いてぼそっと聞いてきました。
僕はついに時が来たことを悟りました。 だけど「言えない。」んです。 喉まで来ているのに「好き」の2文字が声帯を震わせない。
彼女はもう完全に分かっているんです。 彼女だけではありません。 そこは公園なのでたまに人が通ります。 その通りかかる人たちが、僕たちの前を足早に駆け抜けるのです。 完全に告白オーラが出ていたんでしょうね。
「ねえ何なの?」彼女はせかしてきます。 僕は自分の無力に絶望するばかりです。 ついに彼女は切れ気味に「私にどうして欲しいの?」と聞いてきました。
そこでようやく「君がずっと好きで。」とささやくように言えました。 なんて情けない。 告白ってこんなに泥臭いものなのか? もっと爽やかに言えるものだと思っていたのに。
どれだけの沈黙が流れたでしょう。 僕には2~3分に感じました。 「ありがとう。」彼女がぼそっと言いました。
でも、結局振られました。 もう一字一句覚えていませんが「あなたと私は合わない。〇〇君は心がきれいだから。」みたいな内容でした。
なぜかショックはありませんでした。 むしろホッとした記憶があります。 なぜなんでしょうか。 不思議です。
その後僕の部屋に、友人たちが集まりました。皆敗残兵です。(笑) だけど不思議と全員、そこまで落ち込んではいませんでした。
本当の恋はまだ先だと本能で感じていたのか、自分に合わないので振られたことで安堵したのかは分かりません。
これが、僕の数少ない恋愛経験ですね。 これ以降は大したことないです。 もともと異性に対して淡白ってのもありますが。
結局、縁のないままこの歳まで生きてしまいましたが、できれば恋する心は忘れたくはありません。 いろんな意味で原動力になりますしね。
好きな異性がいることで生まれたワールドレコードや数々の表彰、芸術作品はきっと数え切れないほどあるはずです。
僕も恋する心を、生きるパワーに変えて行こうと思っています。